三富栄治『ひかりのたび』(CD/JPN/ FOLK)
淡く郷愁をさそう室内楽アンサンブルという新境地に達した
官能と陰影のギタリスト、三富栄治の4thアルバム
たおやかなフルートのメロディからはじまる『ひかりのたび』は、しかし、勇気を振りしぼって不安を拭い、汗かきべそかき自分と対峙し、出会いがあり別れがあり、と、そのような局面をいくつも慈しむように見つめながら進みます。ほとんどの旅につきもののそのはじまりの心細さ、しかしそれもあとから振り返ればこれほど美しいものはないでしょう。思い出は甘美なもの、エレクトリック・ギターの独奏からはじまった主人公、三富栄治の記憶の底に光を当てれば、その周りをいま豊かな光ーーアンサンブルが包んでいるのが見えるかもしれません。
竹村延和が主宰するチャイルディスクよりリリースした過去3枚のアルバムーー『Futuredays』(2003年)、『1st』(2005年)、『Planet』(2007年)ーーで、孤独なソロ・エレクトリック・ギター演奏(それこそローレン・マザケイン・コナーズやダグ・マッカムのブロークバックと比較されるような…)を披露してきた三富栄治ですが、本作では心機一転、triola、石橋英子やジム・オルーク、オオルタイチらのバンド・メンバーとして知られる波多野敦子(ヴァイオリン他)、GOMES THE HITMAN、NOA NOAの上野洋(フルート他)、NRQやsingo02歪曲楽団を支える服部将典(コントラバス)、トクマルシューゴやスッパバンドほかで大活躍中の岸田佳也(ドラムス他)といった手練の演奏家たちを招集して合奏する新境地に挑んでいます。
トレードマークであるギターの独奏は2曲と控えめながら、コンポーザーとしての三富栄治の素晴らしさをこれほどよく伝える作品もないでしょう。昨年にはTEASIのメンバー(ベース)となり、演奏家として、また作曲家としてグッと幅を広げた音楽家が新たに踏み出した一歩、その新たな一歩の輝きに彼のこれまでの歩みが透けて見えるまるでひとりの人生のような作品、それが、この『ひかりのたび』です。
(sweet dreams pressより)
[track list]
01. 風の舟
02. 蝶
03. 渡り鳥
04. 思い出
05. あたたかい夜
06. みずのワルツ
07. 再会
08. 小さな音楽会
09. ねむれいとしきひとよ
10. 天国の月
11. まちがい
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2013.09リリース